恋した傷痕

あの時の感覚と同じ…。

彼に恋しちゃったあの時と…。

彼は、理学療法士。

リハビリの先生。

最初は、あまりピンと来なかった。でも、あまりの落ち着き様に、妻子持ちだと思った。

奥さんはどんな人なんだろう…。

でも…聞けなかった。

落ち着いた雰囲気にどんどん惹かれて行った私は…知らない間に恋してた…。

彼とのリハビリが一番楽しくて、一番、私が伸びたリハビリだった。

彼は、観察力と洞察力に優れ、患者のタイプに合わせたリハビリを提供してくれる、魔法使いのような先生だった。

現に、彼の担当した患者はメキメキと日を追うごとに回復していく。

私も、その一人だった。

私との時間は、私の話を熱心に聞いてくれ、観察し、目の前で、デモストレーションしてくれた。

頭の中で患者にイメージさせてから、いざ実行へ。

私の場合は、脳性麻痺だけで、認知障害や言語障害がなかった為、非常に速いスピードで回復出来た。

出来る事が増えてきて、リハビリも終盤になると、彼は、部屋まで迎えに来てくれ、今日は、何がしたいかを聞いてくれた。

自分の課題をわかっている私は、多少のワガママも加えつつ、やりたいリハビリをリクエストした。

ある日、リハビリも終盤に差し掛かり、病棟内フリーの許可が出た。看護師や、介護士、先生の付き添いが無く、病棟内なら自由に歩きまわれるのだ。

病棟内フリーになると、ある程度の信用があるので、自由な時間を過ごす事が出来る。

遂に、自主トレーニングの許可が下りた。

自主トレーニングとは、リハビリ室に行き、好きな機械や機具を使い、トレーニング出来るという事。

と、いう事は、一日中、リハビリ室に行き、好きな先生をずっと見ていられるということで…^^;

私は、毎日リハ室へ通った。

もちろん、自主トレをしつつ、彼を見るために…。

今思えば、馬鹿だった。

でも、恋してしまった気持ちを抑えられず…。

ハッキリ言えば、他の人から見たら、ストーカーに近い事をしていたのかもしれない…。

彼が大好きだった。

でも…所詮、私は彼の患者に過ぎない。

告白など出来るはずもなく、私ひとり…彼を見るたび、騒ぎ立てていた。

あの、アイドルを見かけた熱狂的なファンみたいに。

「きゃぁ〜😍◯◯先生だ〜😍カッコイイ(Ü)↑↑」

こちらに気付く彼。

「いやぁ〜〜コッチ向いた〜〜😍

騒がしいのなんのって…(^◇^;)

もちろん、周りはジジババだらけなわけで…。

「若いの〜。ワシも若い頃は、イケ面だったんじゃけどなぁ…。」

そんな声を何度かけられたことか…^^;

今は…彼の写真だけ…。

写真が嫌いなクセに、私の為に精一杯の笑顔で一緒に撮ってくれた一枚のみ。

私の退院前日…。

私に関わってくれた先生達を捕まえ、みんなと写真を撮りまくった。

一番大本命の彼に、直談判出来ないでいる私に、別な先生が付き添ってくれ、一緒に交渉してくれた。

最初、嫌がっていたが、私に付き添ってくれた先生が彼の先輩だということもあり、渋々写真を撮ってくれた。

今は、もう会えない…。

その彼をまだ忘れられずにいるのに…。

どうしたらいいのだろう…。

カテゴリー 日記

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